■近況報告1

 
IDEA国際交流報告2019 バンコク、シーナカリンウィロー大学歯学部:2019年12月
■ 報告者:小野 善弘

 昨年、12月1日日曜日の未明0時5分発バンコク行きのJAL便で東京医科歯科大学名誉教授の和泉雄一先生、近年話題の電動歯ブラシ「IONPAペリオ」の会社アイオニック社の社長西川満社長とともに機上の人となり、現地時間の朝5時30分にバンコクの空港に到着した。到着後、和泉先生の手配で現地のマッサージの予約がなされていて、夜中のフライトの疲れを取る1時間半の快適なマッサージにすっかり熟睡し、初日の行動がはじまった。 バンコクに来たのは15年程前に友人を訪ねたのが初めてで今回は2度目であった。マッサージの後、アイオニック社のタイに於けるパートナー企業(総販売代理店)であるKURON社の女性スタッフの案内でバンコク市内観光を行った。前回来た時に比べて、街全体がきれいになったようで、近代的ビルも立ち並び経済的発展と落ち着いた雰囲気が感じられた。その中にも寺院や歴史的建造物なども整備されていて新鮮な印象を受けることができた。タイは仏教国でお米とお箸の文化の中で国民が育っているので、日本人と似たところがあり、違和感をあまり感じることなく、打ち解けやすく、優しい人が多いように思えた。
2日目は朝からSrinakharinwirot大学での講演で、以前東京医科歯科大学で和泉教授の下で学位を取得したSupanee先生(マヒドン大学の助教授から現Rangsit University准教授)がわざわざホテルまで迎えにきてくださり、朝のラッシュアワーの中を1時間のドライブの後、Srinakharinwirot大学に到着した。まず驚いたのは大学6年生のほとんどが女性で、男子の学生は1割も満たないということだった。タイではそれほど女性の歯科医が多いということだった。
今回の講演の主旨は長期的に良好な治療結果を得るためには歯科衛生士がいかに重要な役割を担っているかを将来の歯科医師に知ってもらうことであった。まず最初に私、小野善弘が「Predictability & Longevity」と題して、長期的な症例を提示しながら、どのようにしてそのような症例が可能になったのかを説明し、歯科治療の中での歯科衛生士の役割を説明した。その次に、和泉先生が歯周病と全身疾患との関係を説明し、歯周病をコントロールすることがいかに全身疾患を予防することにつながるかを具体例を用いて説明した。最後にアイオニック社の西川社長にも講演していただき、初期治療における歯ブラシの効果について、特に和泉先生が開発に関わったIONPA電動歯ブラシの学術的バックグラウンドも含めて話していただいた。その後、歓迎会があり大学の副学長のNarongsak Laosrisin先生、(タイからはじめて日本の歯学部、東京医科歯科大学((TMDU) 歯周病に留学された先生)やSupanee先生、Suteera先生(マヒドン大学⇒Srinakharinwirot University講師)、Mim先生(TMDU, Perio留学生) 、Prima先生(TMDU Perio留学生)らと共に美味しいタイ料理を堪能した。
講演終了後、アイオニック社のタイ現地パートナーであるKURON社を訪問した。そこにアイオニック社の中国の製造パートナー企業のSEAGO社の羅社長、KURON社のNorman社長、その他に中国の歯科材料の会社の社長も同席して電動歯ブラシや歯科材料、デンタルチェアー等についての議論が行われた。やはり日の出の勢いのある中国の若い起業家はスケールが大きく、夢もでっかくて、中国の若手経営者は朝早くから夜遅くまで寸暇を惜しんで働いていて、会社の利益が出たらそのお金を従業員や次の投資へ回している姿を見ていると、戦後の日本の経済の復興を支えた労働力を見る思いがして、将来は中国の若者が世界を席巻するのは間違いないと思われるほどのエネルギーを感じた。その夜はKURON社のNorman社長の招待で高級タイ料理を堪能することができた。
3日目は一日バンコクの南国の太陽の下、観光とゴルフを楽しんだ後、帰国の途につき翌朝羽田に無事到着した。今回の旅行と講演を通して感じたことは、歯科衛生士の活躍するところはまだまだ未開発地域が多いということに気づいた。それに反して日本の患者さんは恵まれているとつくづく感じた。

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バンコク シーナカリンウィロー大学


講義後、シーナカリンウィロー大学歯科病院副病院長、
TMDU Perior留学生、歯学部6年生との集合写真

演者小野先生による長期症例とJIADSそしてIDEAの紹介


シーナカリンウィロー大学副学長のNarongsak Laosrisin先生を
交えてのランチ後
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中華研修レポート:2019年9月
■ 佐久間 隆章

 今回、ジアズ主催の海外向け歯科教育研修グループIDEAの依頼により中国の金華市にある金華口腔医院で3日間、歯科における衛生士の役割や、歯周病に対する基本治療に実践を交え、中国の看護師さん向けに講義をしてきました。また、ドクターには日本の歯科事情、特にジアズで行う歯周治療の流れも含め、ケースプレゼンテーションを行いました。
私を含め、当院の衛生士1名と通訳兼今回の研修のサポートの方が2名、それから株式会社森田の衛生士1名、海外担当の社員1名の合計6名で今回の研修会に臨みました。 私にとって、中国に行く事が初めてであり、ある程度準備はしてきたものの不安でしかありませんでした。

 金華に着き次第、その医院の院長先生にお会いして医院のシステムを含め見学をさせてもらい、中華の歯科事情を教えて頂きました。
先ず、その時点で院長先生のお人柄の良さと人望の厚さを感じ取る事が出来、当初の不安が一気に吹き飛び一安心しました。
中国の歯科事情の不安でもあり、今回の一番の目的なのが、衛生士教育です。中国は、衛生士という職業がなく歯科のサポートを行うのは、歯科の教育を受けていない看護師です。そのことは、院長先生もとても重要な問題だと認識されていました。

 我々に課された任務は、とてつもなく大きな問題でそれがしっかりすれば、中国自体の歯科事情が180度変える事ができると確信しました。ただ、3日間で出来ることなどはたかが知れています。しかしローマは1日にしてならず、小さなことからコツコツと、秦の始皇帝が中華統一を目指すように、我々は只々ひたすら真剣に3日間研修に臨みました
研修は、歯科の基本からです。日本でその授業をしたら眠くなるのではという内容でさえも、中国の看護師さんたちはしっかりとメモや写真をとり沢山質問され、実習に関しても当院の衛生士が襲われるのではないかというくらい群がり、食い入るように真剣に参加されていました。

もしやこのままいけば、中国に衛生士学校ができるのは、そう遠くはない問題ではと思うくらいの気迫が感じ取ることができました。
あっという間の、3日間でした。その研修中の食事、ホテル、交通に関して大変手厚くサポートしていただいた事で、研修も大変スムーズに行う事ができました。関係して頂いた方々全てに感謝したいです。
帰国前日、中国の古き良き時代を感じ取れる金華の街から、世界へ発信の街でもある上海の夜景を初めて見る事が出来ました。上海の夜景からは、歯科事情が遅れている事など一ミリも感じる事など出来ませんし、反対に高層ビルが立ち並ぶ所を見ると私は危機感をおぼえるくらいでした。
何年か後に、中国の歯科事情は全く変わってのかもしれません。

ただ、そこまでは今の段階では分かりませんが、我々歯科医師は患者さんのために医療を全うする事が目的なのはずっと変わりはありません。
今後も、そのためには努力を惜しまず邁進していきたいと思います。
今回の研修は、自分にとっても良い経験となりました。本当にありがとうございました。

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中国浙江省金華市歯科研修会 2019/9/21~9/23:2019年9月
■  (医)腎済会佐久間デンタルクリニック 歯科衛生士 加賀谷藍

 まず私は今回この研修会に参加させていただく事になり、初めて中国において歯科衛生士制度がない事、代わりに看護師の皆さんが専門的な教育がないままにその役割を担っている事を知りました。勤務先の環境によって知識や技術にもかなりのバラつきがあり、今回ご参加頂いた看護士さんの中には「キュレットを持ってきて下さい」とお願いした所、外科用の大きな剝離子のようなものをお持ちになった方もいたほどです。また皆さんと話をさせていただく中で歯科衛生士(歯科看護士)としてDRと共に「チームの一員として患者さんに貢献する」、「自分が患者さんをより健康な方へ導くのだ」といった感覚が、今一歩ためらいと共に踏み出せないでいるような感じを得ました。しかし実際にご参加いただいた皆さんの目はとても輝いておりハングリーに学ぼうとする姿勢が全面に出ていて、一方的に講義をするだけでなく質問やディスカッションも多く飛び交い逆に私自身が刺激をいただきました。まずきちんとした知識や技術を学ぶ機会が今後増えていく事、その上で皆さんに患者さんから「ありがとう」と言っていただける喜びを感じてもらえ日が来れば良いと思います。また今回このような機会を与えて頂いたIDEAの和泉先生、小野先生をはじめ、施設を提供して頂いた金華市口腔医院の皆様、お世話になった全ての皆様に感謝を申し上げます。




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中国浙江省金華市歯科研修会(金華市口腔外科病院)研修会のご報告:2019年9月
■ 株式会社モリタ セールスプロモーション部 予防歯科促進グループ 木村智美

 2019年9月21日~23日の3日間の日程で、中国金華市口腔外科病院にて、歯科医療の更なるスキルアップを目的とした研修会が開催されました。

 中国の歯科事情として、人口13億人に対し14万人弱の歯科医師がいらっしゃいますが、開業している歯科医師はごく少数で、殆どが歯科専門病院に勤務されています。
また、中国は歯科衛生士制度がなく、現在は看護師をはじめとした病院スタッフの方々が歯科医師と共に歯科医療に携わっています。

 このような現状を背景に、JIADS福島会長の佐久間隆章先生、佐久間デンタルクリニックご勤務のDH加賀谷藍先生によって組み立てられた今回の研修プログラムは『日本の歯科事情と口腔概論』『歯周治療の流れ/目的とゴール設定』『歯周治療におけるメンテナンスの重要性』の3つのテーマのもと、講義・デモ・実習で構成された大変充実したものでした。今回、約35名の病院スタッフ様が参加されましたが、最初はとても緊張した面持ちで受講されていたものの、次第に積極的な質問が飛び交い、最終日までのスケジュールの予定が押すほどの盛り上がりとなりました。

 最後に弊社から本研修会に参加させていただき、大変貴重な機会を頂戴いたしましたことをこの場をお借りしまして、関係各位様には改めまして御礼申し上げます。
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金華市講演報告:2019年6月
■ 医療法人ファミリア歯科 岡山啓昌

 一般社団法人国際歯科臨床教育研究会の小野善弘先生から2019年6月28日に中華人民共和国金華市口腔医療学会学術大会での講演依頼があり、参加してまいりました。
浙江省金華市は、人口が約540万、歯科医師数は人口1万人に1名程度です。金華市の面積は、私の診療所がある宮城県の1.5倍の広さがあります。この広さで540名程の歯科医師が診療に従事しているそうです。その地域の歯科医療がどのように行われているのか。医療システムが日本と違うのでどの分野の内容をお話すればよいのかと現地コーディネーターにお聞きしたところ、日本での日常診療を中心にといった非常に曖昧な依頼でした。

 事前打ち合わせで、個人開業医院はなく、歯科病院という形態で診療を行っています。また、中国は歯科衛生士という職種がないので大学卒業後の若手歯科医師が衛生士業務を行っているとのことでした。発表に関して日本と違う点として、スライドは事前に翻訳者に渡し中国語でのスライドが映し出されること、LEDスクリーンのためレーザーポインターが使用できないことでした。
発表内容は、歯周病治療(診査・診断、治療計画、衛生士が担う口腔衛生指導、SRP、歯周外科、メインテナンスを行うための定期健診のシステム)。歯根膜を利用した歯を残す技術(歯の移植、外科的挺出、矯正的挺出)、小児からの口腔育成,審美修復治療と多岐に渡る範囲の治療を供覧していただきました。

歯科医師不足や衛生士がいないため中国の歯科治療では、口腔内の機微な変化を捉えることなく治療を進めているようです。講演を通じて衛生士の活躍によって、劇的に口腔衛生状態の改善に繋がることや定期健診による患者との長いお付き合いがあること、小児期からの定期健診でわずかな歯科治療の介入によって不正咬合の芽をつみとり、健全な歯列に導く口腔育成に非常に高い関心を寄せていただけたようです。日本ならではのきめ細やかな診療内容を紹介することによって、現地の国民の方の健康に寄与できるよう今後一般社団法人国際歯科臨床教育研究会の役割は大きくなると思いました。


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第一回中日口腔技術交流会に同行して:2019年4月
■ アイオニック株式会社 西川 満

アイオニック株式会社の代表を務めております西川と申します。当社は、1977年創業のイオン歯ブラシを主力商品とした専業メーカーであり、永らく手用の歯ブラシを手掛けておりました。2010年ごろより東京医科歯科大学歯学部歯周病教室の和泉雄一主任教授(当時)のチームと「歯周病に対するイオン効果の共同研究」を実施させて頂いておりました。そこで、和泉先生からイオン効果に音波振動を加えることで、今後老齢化が進む日本において理想的な歯周病対策が可能になるのではというお話を頂戴し、イオン音波振動歯ブラシを共同開発(2016)させて頂くことになりました。その製品がイオン音波振動歯ブラシ「IONPA シリーズ」となります。
その和泉先生から、「歯科医師にとって卒業後のContinuing Dental Educationにより、知識とスキルの不断の最新化が重要である」とのご高説を予てよりしばしば伺っておりました。そして、それを日本に於いて体系立てて持続可能な形で創見された立役者として小野 善弘先生のことを仄聞しておりました(JIADS)。その両先生が新しい一般社団法人 国際歯科臨床教育研究会(IDEA)を立ち上げられるとのことでしたので、微力ではありますが、賛助会員にならせて頂きました。
そして、その活動のキックオフとして、「歯周病治療において日本から学ぼうとする意欲が高い中国での講演ツアー」を企図されておられました。そこで、中国で事業を展開している弊社として何かお手伝いできることをないかとの思いで同行させて頂くことになりました。就いては、弊社の中国における販売総代理店であるKUNCHIグループ、共同事業を検討していた歩長製薬等の助けを借りてサポートさせて頂くことに致しました。
スケジュールは2019年4月12日(金)~14日(日) 強行軍スケジュールにて、北京及び上海にて開催されました。「口腔技術交流会」となっていますが、中身は小野先生、和泉両先生のご講演が中心となりました。北京及び上海では歯周病関連の臨床医及び研究者が数多く参加され、食い入るように講演を受講されていました。目的は、中国に於ける歯周病治療の向上並びに歯科衛生士制度の提案というものでした。

北京会場: 首都医科大学付属口腔病院 (約100名)
上海会場: 嘉定区歯科疾患予防所    (約 80名)

Day 1 北京会場 首都医科大学付属口腔病院にて

北京 首都医科大学の掲示板に小野先生、和泉先生のご講演のご案内

冬青先生。和泉先生のお弟子さんで、東京医科歯科大学にてPhD.取得。そして留学期間中に外国人としては至難といわれる日本での歯科医師免許を獲得された逸材中の逸材とのこと。今回の中国側でのアカデミックな受け皿になっておられました。

筆者と両先生
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